【株価評価】自社株の「時価」は相続税法の時価と法人税法(≒所得税法)の時価を算定しよう

株価評価
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にお あつし

この記事を書いた人はこんな人です。ご興味があれば、どうぞ!

にお あつしってどんなひと?(税理士ブロガー。趣味はバイクとフルート♬)

自社株を株価評価をするときに「相続税法上の株価」と「法人税法上の株価」を算定する必要があります。

これについて、税理士のなかでも「それは当たり前!」という方と「え、そうなの!知らなかった、」という方に二極化しているのではないかと思います。

ちなみに以前私も株価評価で「法人税法上の時価」を算定するという意識が頭になく、大手税理士法人に転職したときに赤っ恥をかきました(笑)

株価評価

自社株には3つの時価がある。

自社株には3つの時価があります。

3つの時価

・相続税法上の時価(財基通178-189-7)

・法人法上の時価(法基通9-1-14)

・所得税法上の時価(所基通59-6)

細かい違いはありますが法人税上の時価≒所得税法上の時価となるため、実務上株価評価をするときは「相続税法上の時価」と「法人税法上の時価」を算定することになります。

「相続法上の時価」と「法人税法上の時価」については、取引相手が個人なのか法人なのかによって使い分けることになります。

使い分け

□個人⇔個人 

 相続税法上の時価を使用

 (例)相続、個人間で贈与・譲渡

□個人⇔法人  法人⇔法人 

 法人税法上の時価を使用

 (例) 法人が個人から自社株を買取り 法人間取引(株式交換等の組織再編を含む)

ポイントは取引相手のうちいずれか一方に法人がいる場合には法人税法上の時価を使用します

相続税法上の「時価」と法人税法上の「時価」の違い

次に、相続税法上の「時価」と法人税法上の「時価」の違いをまとめました。

2つの時価の違い

□相続税法上の「時価」

財産評価基本通達の178から189-7に従い評価をする。

⇨我々でいう通常の株価評価

□法人税法上の「時価」

財産評価基本通達の178から189-7をベースに評価しつつも、以下のルールでは従ってください。

(1) 法人がその会社にとって「中心的な同族株主」に該当するときは、その会社は常に「小会社」として株価評価する。

(2) 土地やは上場株式等を有しているときは、当該事業年度終了の時における価額しか使えない。

(3) 財産評価1株当たりの純資産価額の計算に当たり、評価差額に対する法人税額等に相当する金額は控除できない。

相続税法上の時価の場合は会社の規模に応じて「大会社」「中会社」「小会社」に区分して評価しますが法人税法上の時価の場合は会社の規模に関係なく「小会社」として評価します

土地等については、相続税法上の時価の場合は土地を固定資産税評価額ベースや路線価ベースで評価しますが、法人税上の時価の場合は土地を実勢価格などで評価します。具体的には固定資産税評価額ベースの評価額÷0.7や路線価ベースの評価額÷0.8で実税価格を算定します。

上場株式等については、相続税法上の時価は「①課税時期の最終価格、②課税時期の月の毎日の最終価格の平均額 ③課税時期の月の前月の毎日の最終価格の平均額 ④課税時期の月の前々月の毎日の最終価格の平均額」のうち最も低い価額を選択できますが法人税法上の時価は「①課税時期の最終価格」しか選択できません。

純資産価額の計算のあたり、相続税法上の時価は「評価差額に対する法人税額等に相当する金額」は控除できますが法人税法上の時価は「評価差額に対する法人税額等に相当する金額」は控除できません

ここまできてお察しの良い方は気づいているはず・・・。

法人税法上の時価って相続税法上の時価と比べてかなり高くなるのでは…

上記の小難しい話を省略してでもお伝えしたいポイントはここになります

そうなんです。

ほとんどのケースの場合、法人税法上の時価>>>>>相続税法上の時価となります。

これに気づかずに、個人⇔法人、法人⇔法人間の自社株取引について「相続税法上の時価」を使用した場合に適正な時価よりも低い時価で取引したことになり、課税リスク(※後日別の記事でまとめます)が発生していることになります。

株価評価で相続税法上の時価しか算定していない場合は、あぶない橋を渡っていることを肝に銘じておきましょう。

法人税法上の時価の算定するには

実務で株価評価をするには、財産評価のソフトで評価明細書を作成していくことになると思いますが、通常の評価明細書では相続税法上の時価しか算定していないことを意識しましょう。

法人税法上の時価を算定する場合には、相続税法上の時価の評価明細書をベースにして、会社規模やLの割合、純資産価額の計算において土地、上場株式等、評価益に対する法人税等相当額などの箇所をご自身で修正する必要があります。

あとは、自社株の「時価」という論点を通じて、「法人税⇔所得税⇔相続税」の横のつながりを勉強することが大切です。みなし配当、低額譲渡、みなし贈与などを復習することができます。

私は下記の書籍で自社株の「時価」の知識を身につけました。

法人税、所得税、相続税の横のつながりが綺麗にまとまっていておすすめです。

-参考-

第3款 有価証券の評価損

-編集後記-

本日は実家で仕事。

場所を変えて仕事をするのも新鮮です。(^^)/

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