【相続税/贈与税】自社株の時価を税務ソフトではなくExcelで算定するほうが良い理由

奈良県宇陀市の又兵衛桜 Nikon D7200で撮影
奈良県宇陀市の又兵衛桜 Nikon D7200で撮影

多くの会計事務所ではクライアントの会社の株価評価をするときに財産評価の税務ソフトを使用していると思いますが、個人的には株価評価はExcelで算式を組んで算定することをおすすめします。

今回は、自社株の株価を税務ソフトではなくExcelで算定するほうが良い理由を整理しました。

相続税業務の場合には2つの時価の算定が必要

 

相続税法上の株価と法人税法上の株価

自社株の時価の算定いうのは上記の図で示すとおり、相続税法上の時価法人税法上の時価(≒所得税法上の時価)を算定する必要があります。

相続や贈与の場合には、個人から個人への財産の移転となり、この場合の自社株の時価は相続税法上の時価を使用します。

いっぽう自社株の売買などで取引相手のいずれかいっぽうが法人である場合や法人-法人間の取引の場合には、自社株の時価は法人税法上の時価を使用します。

例えば相続税のシミュレーションをする場合には、財産の取得した者ごとに相続税を試算しますが、併せて相続税を被相続人から取得した(換金性のある)財産から支払うことができるのか、いわゆる納税資金も試算することになります。

納税資金が足りない場合には納税資金を確保する必要があり、その相続又は遺贈により取得した自社株式をその自社株の発行会社に買い取ってもらい納税資金を確保するという手法も検討する必要があります。

この場合は取引相手のいずれかいっぽうが法人となるので法人税法上の時価を使用することになります。

このように相続税対策をするときに自社株をその発行法人に譲渡することはよくある手法です。

相続対策するときは相続税法上の時価と法人税法上の時価の2つの時価を算定する必要があります。

株価評価で法人税法上の時価の算定が忘れられる理由

今でも相続税法上の時価しか算定していない(そもそも株価評価すらしていない)という会計事務所も多く見受けられます。

では、なぜ法人税法上の時価の算定は忘れられてしまうのか、その理由は主に二つあります。

①市販の財産評価ソフトのほとんどが相続税法上の時価しか算定できない仕様となっている

株価評価業務は相続や贈与という個人間取引を前提にしているということもあり、市販の財産評価ソフトもその前提に習っているような感じです。

②税理士試験で法人税法や相続税法を受験しても法人税上の時価の算定を学ばない。

相続税法上の時価の算定の根拠規定は「財基通178~189-7」であり、この通達は相続税法の受験でがっつり勉強します。

いっぽう、法人税法上の時価の算定の根拠規定は「法基通9-1-14」ですが、法人税法の受験で勉強しません。

上記の理由により法基通9-1-14の規定の存在を知らない人間が財産評価ソフトを使用して株価評価をすると相続税法上の時価のみ算定することになります。

前節で示した通り、相続税の生前対策をする上では法人の自己株式の買取も想定する必要があります。

相続税の生前対策においては相続税法上の時価のみの算定は株価評価業務として不完全なものとなります。

株価評価をエクセルで算定するほうが良い理由

法人税法上の時価は相続税法上の時価の算定方法をベースにしつつも、Lの割合、有価証券や土地の評価、法人税相当額の控除などの論点で相続税法上の時価と算定方法が異なります。

Excelで株価評価をする場合は、相続税法上の時価の算定シート法人税法上の時価の算定シートを別々につくり、法人税法上の時価の算定シートについては相続税法上の時価と算定方法が同じ項目は相続税法上の時価の算定シートから自動転記、法人税上の時価の固有の論点は個別に算式を組めば、法人税法上の時価を算定することができます。

ただし、株価評価シートをエクセルで組む場合には、株価評価の正しい知識を身につける必要があります。(知識がないとExcelか株価算定シートを作成するのが困難)

株価評価の正しい知識を身につけるには、相続税-法人税-所得税の横のつながりを勉強する必要もあり、それ相応の時間と根気が必要なりますが、自社株の適切な時価を算定するには避けては通れない道です。

一番怖いのは、決算書や申告書、固定資産税課税明細書や路線価図などの資料から金額を拾って財産評価ソフトに入力して株価評価ができたと勘違いすることです。

私の周りでも「株価評価って思ったよりも簡単」と言う同業者もいますが、よくよく話を聞いていると単に所定の資料の数値を財産評価ソフトに入力しているだけで、「本当に適切な時価を算定しているの?」と疑問に思うこともあります。

便利なものに頼りすぎるのは実務家本人の実力を低下する要因となります。

また、イレギュラーな論点についても財産評価ソフトよりもExcelのほうが柔軟な対応ができますし、株価算定書の作成についてもExcelのほうがよりオーダーメイドなものを作成することができます。

そういった意味ではExcelで株価評価をすることにはたくさんのメリットがあり、私はExcelで株価評価をすることをおすすめします。


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■編集後記-

週末は、奈良県の吉野山の千本桜の写真を撮りに行きました。

早朝5時頃から吉野山を散策したので翌日は程よい筋肉痛でした。

■一日一新

人生初の吉野山散策と千本桜の花見

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