税務相談で名義預金や名義株などの名義財産について質問を受ける機会が増えました。
名義預金や名義株は相続税業務の“き・ほ・ん”の“き”ですが、実は奥が深い論点であり、実務上は判断に迷うものでもあります。
今回は名義株の基本的な内容について整理しました。
名義預金については過去に記事を書いているのでこちらをご参考に。
名義株とは?
名義株とは?
名義株とは、他人名義を借用して、株式の引受け、払込みがなされた株式をいいます。
名義借用の結果として、株式名簿上の株主と、その株式の実質的な所有者とが異なる状態となった株式をいいます。
名義株の取扱い
名義株、例えば株式名簿上の株主は被相続人ではないが、その株式の実質的な所有者が被相続人である場合には、その株式は被相続人の相続財産に含める必要があり、相続税の課税の対象となります。
その株式等が名義株に該当するかどうかは次節の判断基準により判断することになります。
名義株の判断基準
名義株の判断基準は➀~④をもとに判断することになります。
➀資金源は何か(出捐者は誰か)
株式等の資金源を被相続人が拠出した場合、株式等の名義人へ贈与された事実があれば名義人に帰属するものとなりますが、贈与の事実がなければ名義を借用しただけとみなされ、実質的に被相続人に帰属することになります。
資金源が被相続人のものであるか、名義人のものであるかわからない場合には、名義人の当時の収入状況や財産状況などを確認し、名義人にその財産(株式等)を形成するだけの資力があったかどうかを確認することになります。
②生前贈与がなされたものか
株式等の名義人が被相続人から贈与を受けたものであれば、その株式等は名義人に帰属する財産(株式等)となりますが、贈与が有効に成立していない場合には、被相続人に帰属する財産(株式等)となります。
税務上、贈与が成立しているかどうかは以下の点がポイントとなります。
●贈与契約書が結ばれているかどうか?
●名義人がその財産の存在を知っていたかどうか?
●贈与税の申告がされているかどうか?
③その株式等の管理及び運用を誰がしていたか
株式等が名義人のものであるというためには、名義人が自らその株式等の管理及び運用をする必要があります。
具体的には
・証券会社から原則3ヶ月に1度送付される取引残高報告書を名義人が確認していること
・証券口座の印鑑を名義人が管理し、資金を自由に出し入れできる状態にあること
・株式等の売買、投信信託の商品の組替えを名義人が自己の責任に基づいて行っていること
がポイントとなります。
④株式等か生ずる利益が誰か享受していたか
株式であれば配当金、投資信託であれば分配金といった、財産から生ずる利益を誰が享受していたかとういうことがポイントとなります。
誰が利益を享受していたかによって元本の帰属を判断することになります。
名義株に該当する事例、該当しない事例
名義株に該当する場合
例えば、➀夫が自己の資金を投入して妻名義の口座を開設して株式を取得する、②その後も夫が口座を管理し、取引残高報告書も夫宛に送付されるケースの場合は名義株に該当するものと考えられます。
名義株に該当しない場合
父が当初資金を投入したものの、➀妻へ株式及び証券口座の贈与が有効に成立し、②以後妻が証券口座を管理・運用し、配当金も受け取り、取引残高報告書も妻が確認しているケースは名義株に該当しないものと考えられます。
ここでは簡単な具体例を記載しましたが、冒頭でもお伝えしたとおり名義株は相続税業務の“き・ほ・ん”の“き”ですが、実は奥が深い論点であり、実務上は判断に迷うものでもあります。
また名義株はケースによっては金額の大きいものがあり、その証券口座が名義株に該当するかどうかで相続税の負担が大きく変わることもあります。
判断に迷われた場合には、顧問先や知り合いの税理士に事前に相談されることをおすすめいたします。
税理士の知り合いがおられない場合には、当事務所にお気軽にご相談ください。(単発のサービスが税務相談サービスとなります。)
■編集後記
行政書士の登録審査の書類提出が完了。
午後からネット営業。新サービスの固定ページの作成開始。
■一日一新
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1984年10月30日生まれ。滋賀県大津市生まれ。京都府長岡京市在住。ひとり税理士。相続や会社・フリーランスのための経理やお金を残すサポートが得意。前職は営業マン⇒フォークリフトマン⇒塗装工⇒フリーター⇒税理士補助といろんな職種を経験。ビッグ4(現:デロイトトーマツ税理士法人)にも在籍。いい意味で税理士っぽくない税理士。趣味はランニング。
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