お客さまと打合せをしているとよくこういった質問を受けます。
お客さま:「におさん、銀行の窓口で『教育資金(1,500万円)の制度を利用してお孫さんに贈与しませんか?1,500万円まで贈与税は非課税なので相続税対策に有効ですよ』と言われたけど、どうなん?」
にお:「銀行の言っていることは間違いはないです。ただ、教育資金の贈与についてはもうひとつ非課税の規定があって、案外この規定を忘れがちなんです。その規定との比較して選択することになりますね。」
今回は、教育資金にまつわる2つの非課税規定についてまとめました。
ご参考ください。
教育資金贈与(1,500万円)の非課税規定 措法70の2の2
まずは銀行がすすめる教育資金についてざっくり整理すると以下のようになります。
✒直系尊属(例:本人)が30歳未満の個人(例:孫)に贈与した金銭で金融機関等で一定の手続き(教育資金用の口座をつくるetc)をしたものは1,500万円まで非課税。(一定の所得制限あり)
✒個人(例:孫)が30歳に達した日等(以下「教育資金管理契約終了の日」という)に教育資金用の口座に残高がある場合には、その残高についてはその個人の30歳に達した日の属する年の贈与税の課税対象となる。
✒直系尊属(例:本人)が教育資金を贈与した日から教育資金管理契約終了の日までに死亡した場合には、受贈者(例:孫)が教育資金用の口座の残高が相続税の課税対象となる。(ただし、相続開始の日に受贈者が23歳未満である場合等は相続税の課税対象とならない)
✒手続き:教育資金の支出のために教育資金用の口座からお金を引き出すには金融機関に領収書を提出する必要がある。
ここで大切なポイントをチェック
それは、教育資金として孫から引き出されるまで通帳に金銭として残るという点です。
忘れがちな贈与税の非課税財産の規定(相続税法21③)
銀行の広告により前節の教育資金の非課税がスポットライトを浴びてるせいか、本法(相続税法のこと)の非課税規定は忘れられがちです。
本法の概要は以下のようになります。
こちらはまず、関連する法律を確認しましょう。
【相続税法21条の3(贈与税の非課税財産)】
扶養義務者間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの
【民法877条(扶養義務者)】
直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養する義務がある。
まとめると、
✒扶養義務者には直系血族が含まれていて、本人と孫(子)は直系血族の関係
✒教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの=教育費(という費用)⇨費用とは必要な都度、必要なぶんだけ贈与すること(金銭として残らない)
∴本人が孫(子)の学校費用を必要な都度、必要な額だけ支払っているのであれば、孫(子)の手もとには金銭が残らないので贈与税は非課税となる。
私も小学校から大学までの教育費用を親に支払ってもらっていましたが、なぜ贈与税の問題が生じなかったというと、この相続税法21③の規定よって贈与税は非課税扱いになっていたからなんです。
仮に、私が親から贈与を受けた金銭を大学費用に使わず通帳に貯金した場合には、金銭として残っているため贈与税の課税対象となります。
2つの非課税規定の使い分け
前節、前々節で教育資金については2つの非課税の規定があることを説明しました。
個人的には、小金持ちの方やお金持ちではないけど所有している不動産の時価が高く相続税が発生する可能性がある方は相続税法21③の贈与税の非課税財産の規定を優先して使用し、死期を悟ってもう老後の心配が不要になった時点で措法70の2の2の教育資金の非課税の規定を利用して一括贈与すればいいと思います。
孫の教育費で必要になったときに必要なぶんだけ贈与することで、孫がその都度家に顔を出しにきてくれ、感謝され、大切にされる老人になります。
教育資金の場合はどうでしょうか?
孫はこころの中で感謝しているかもしれませんが、孫が教育費が必要になったときに向かうのは家ではなく銀行です。
こういった人間の感情の部分についても相続税の生前対策においては大切なことです。
(会社の自社株を所有しているなど)超富裕層の方は銀行の進める措法70の2の2の教育資金を優先して利用したほうがいいケースもありますので、こちらについては一度相続税の試算をするなどして顧問税理士や相続が得意な税理士に相談することをおすすめいたします。
-編集後記-
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にお あつしってどんなひと?(税理士ブロガー。趣味はバイクとフルート♬)