【消費税/インボイス】振込手数料の取扱いは恐れるに足らず。振込手数料自体の負担を減らすことが大切!

お寺に面白い花が咲いていた
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税理士
にお あつし

こんにちは!

マラソン・バイク・フルートをこよなく愛する

京都府長岡京市在住の税理士の丹尾 淳史(にお あつし)です。

今回は振込手数料のインボイスの取扱いについて述べたいと思います。(2023年10月1日時点の情報をもとに記事を書いております。)

対象者と影響度

原則課税方式で消費税を計算する方→関係あり

・簡易課税方式で消費税を計算する方→関係なし

・2割特例方式で消費税を計算する方→関係なし

振込手数料の経理

金融機関を通じて得意先から売上を入金してもらったときに振込手数料が差し引かれることがあります。

10,000円(売上金)△540(振込手数料)円=9,460円(入金額)

この振込手数料の会計処理の方法は2パターンあります。

⑴振込手数料を「売上値引」として売上値引き処理する方法

普通預金 9,460円  / 売掛金  10,000円

売上値引  540円  /

⑵振込手数料を「支払手数料」として費用処理する方法

普通預金  9,460円  / 売掛金  10,000円

支払手数料  540円  /

振込手数料の会計処理の方法によって、それぞれインボイスの取扱いが異なるため

「ややこしい、実務が煩雑になる」

という意見も聞きますが、個人的にはそこまで心配する必要はないかなと思います。

売上規模1億円超の事業者で、かつ、売上値引き処理している場合

まずは、売上規模1億円超の事業者で、かつ、振込手数料を売上値引処理している事業者についてです。

〇振込手数料を「売上値引」として売上値引き処理する方法

普通預金 9,460円  / 売掛金  10,000円

売上値引  540円  /

また、消費税の計算は、以下の算式で概要を表すことができます。(本当はもっと難しいですが)

(算式)

売上に係る消費税-売上返品・値引きに係る消費税-仕入に係る消費税=納める消費税

 

振込手数料を売上値引き処理した場合には、その振込手数料に係る消費税は「売上返品・値引きに係る消費税」として納める税金を消費税を減額します。

インボイス施行後は、納める消費税を減額する取引(売上返品・値引、仕入など)には、その取引に係る証憑書類が適格(返還)請求書(詳細は次節)でないと原則認められませんが、

売上返品・値引きについては、

その返品・値引き金額が1万円未満の場合には、適格(返還)請求書の交付義務が免除されるので、インボイス施行前の登録番号を確認しない従来の方法でも、消費税の計算上、100%売上返品・値引きとして納める消費税を減額することができます。

通常の取引で振込手数料が1万円以上になることはないので、実務が煩雑になることなく100%売上返品・値引きとして納める消費税を減額することが可能です。

売上規模1億円超の事業者で、かつ、費用処理している場合

次に、売上規模1億円超の事業者で、かつ、振込手数料を費用処理している事業者についてです。

〇振込手数料を「支払手数料」として費用処理する方法

普通預金 9,460円  / 売掛金  10,000円

支払手数料 540円  /

消費税の計算は、以下の算式で概要を表すことができます。(本当はもっと難しいですが)

(算式)

売上に係る消費税-売上返品・値引きに係る消費税-仕入に係る消費税=納める消費税

振込手数料を費用処理した場合には、その振込手数料に係る消費税は「仕入に係る消費税」として納める税金を消費税を減額します。

インボイス施行後は、仕入に係る消費税については、その取引に係る証憑書類が適格請求書でないと原則認められません。

適格請求書とは

⑴適格請求書の発行事業者

⑵取引日、取引内容、取引金額

⑶請求書の発行を受ける者の氏名

⑷登録番号

の記載がある証憑書類をいいます。

ここでおさえときたい考え方として、

この上記の記載の要件は1つの書類のみで満たす必要はなく、複数の書類を1セットして要件を満たしてもよいこととされています。(証憑書類には請求書や領収書のほか、納品書、通帳なども含まれます。)

振込手数料でいうと、

⑴適格請求書の発行事業者と、⑶請求書の発行を受ける者の氏名は、

通帳の表面や見開き1,2ページに記載されていますし、

⑵取引日、取引内容、取引金額も、

通帳の明細に記載されています。

あとは、⑷登録番号ですが、

金融機関は法人で、法人のインボイス登録番号は法人番号に頭にTをつけるだけです。

法人番号を金融機関名で検索(国税庁の法人番号公表サイトで検索)して、

検索した法人番号をもとに登録番号を検索(国税庁の適格請求書発行事業者公表サイト)して、その金融機関の登録番号を通帳をセットで保管しておけば、適格請求書の要件を満たすことになります。

つまり、通帳と金融機関の登録番号をセットで保管しておけば、振込手数料は、消費税の計算上100%経費として認められることになります

特に難しくないですよね…。

売上規模が1億円以下の事業者の場合

売上規模1億円以下の事業者は、1回の取引が1万円(税込)未満の取引については、登録番号(T13桁)を確認しなくても、消費税の計算において100%経費(仕入税額控除)の経理処理をしてもいいことになります。(売上規模が1億円以下かどうかは基準期間(一般的に個人は2年前、法人は前々事業年度)の売上高で判定)

よく見たら水面に「円」が NikonD780 AF-S NIKKOR 24-70mm

通常の取引であれば、金融機関の振込手数料が1万円以上になることはないでしょう。

そのため、振込手数料について

支払手数料として費用処理したとしても、消費税の計算上100%経費として認められることになります

売上値引きとして値引処理したとしても、返品・値引き金額が1万円未満の場合には、適格(返還)請求書の交付義務が免除されるため、消費税の計算上、100%売上返品・値引きとして納める消費税を減額することができます。

つまり、インボイス施行前と同じ経理作業でも問題なく、実務が煩雑することはないです。

帳簿の記載方法

消費税の計算上、経費として認められる場合には「帳簿」の要件を満たす必要があります。

「帳簿」の要件とは、

帳簿に各取引ごとに

➀取引先(売上値引きの場合には「得意先名」を、費用処理の場合には「金融機関名」を記載)

➁取引日

➂取引内容

➃取引金額

を記載することになります。

つまり、インボイス施行前と同じ経理作業でも問題なく、実務が煩雑することはないです。

インボイス対策ではなく、振込手数料の負担自体を減らす方が大切

金融機関の振込手数料については、個人的にはインボイスの取扱いは心配する必要はないかなと思います。

むしろこれを機に、振込手数料の負担自体を減らすことを考えることが大切かなと。

振込手数料は1回ごとの金額は少額(少額といっても、500円を超えた場合には、その金額でランチ代に回せることを考えると痛手)ですが、塵積って山となる方式で、振込手数料も積もると結構な金額となります。

振込手数料は、自分が負担するか、得意先が負担するかは交渉の余地がありますし、楽天銀行などのネットバンキングを使用していると、(回数上限はありますが)自分が負担する振込手数料がタダになる銀行もあります。(もちろん得意先も負担なし)

複数の金融機関の通帳も持っている事業者についても、毎月発生する経常的な取引については、ネットバンキングを通じて決済するなど、色々と工夫して振込手数料の負担を減らすことも検討してみましょう。


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相続・贈与・譲渡などの資産税サービス

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■本日の仕事

1日中、スポット業務の成果物作成

□練習日誌(フルマラソン、サブ4チャレンジ)

60分ジョグ

税理士 丹尾淳史

1984年10月30日生まれ。滋賀県大津市生まれ。京都府長岡京市在住。ひとり税理士。相続や会社・フリーランスのための経理やお金を残すサポートが得意。前職は営業マン⇒製造(フォークリフトマン&夜勤塗装)⇒フリーター⇒税理士補助といろんな職種を経験。ビッグ4(現:デロイトトーマツ税理士法人)にも在籍。いい意味で税理士っぽくない税理士。趣味はランニング、バイク、フルート、風景写真。詳細はこちら

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