商品の中古車を自社用として使用し、再び商品として売ると節税?
今年も例年ほどではないですが支部活動の税務相談会に税務相談員として参加しました。
相談会では、中古車や中古バイクを販売業者の方から「(税理士ではない)税務コンサルタントや税金に詳しい同業者から聞いたのだけど、税理士さんなら知ってますよね?」という感じで以下の質問を度々受けることがあります。
「中古の商品(自動車又はバイク)を仕入れて、まずは自社用の車やバイク(固定資産)として使用し、その後、商品として販売した場合、減価償却費も計上できるし、販売時に売上原価としても計上できる。経費をたくさん計上できるのでそのぶん節税できる。税理士なら当然知ってるとね。」という質問。
相談者さんの頭の中では、
例を挙げると
50万円の中古車バイクを仕入れて、2年間自分用として使用し、(中古のバイクは耐用年数2年なので)499,999円の減価償却を計上、その後80万円で販売し、仕入金額の50万円を売上原価で計上する。結果、2年間で収入金額80万円に対し、減価償却費と売上原価の計999,999万円を経費として計上できるので節税になるということでした。
節税になるか、脱税になるか、ポイントは簿記の知識。
おそらく簿記3級以上の知識があれば、前節のスキームが節税になるか脱税になるか一瞬で判断できるでしょう。
50万円の中古車バイクを仕入れて、2年間自分用として使用し、(中古のバイクは耐用年数2年なので)約50万円(499,999円)の減価償却を計上、2年目の最終日に80万円で販売した場合、実際にどんなことが起こるのか?
2年間で減価償却費を499,999円を計上、これは正解。
ただし、そのバイクを販売した場合、収入金額800,000円に対し、売上原価は1円なり、販売時に799,999円の利益が発生することになります。
2年間トータルで見ると
2年目の収入800,000円△(1~2年目の減価償却費499,999円+2年目の売上原価1円)=利益300,000円
これって、商品を50万円で仕入れて80万円で販売して利益30万円という通常の取引と結果は同じです。
減価償却費という形で先行して経費を計上しているに過ぎません。
仮に減価償却費を499,999円を計上後、販売時に売上原価50万円を計上した場合には、499,999円分経費の二重計上となり脱税行為となりますので注意が必要です。
支出以上の金額を経費にできないという真実を理解する
複式簿記の知識があり、頭の中で会計仕訳をイメージできる方は、このスキームが脱税スキームであることは瞬時に判断できます。
話の内容を聴きながら、頭の中で
1年目
1/1 商品仕入時
商品500,000円 /現金 500,000円
1/1 固定資産として使用
車両運搬具 500,000円 / 商品500,000円
12/31 減価償却
減価償却費 250,000円 / 車両運搬具 250,000円
2年目
12/31 減価償却
減価償却費 249,999円 / 車両運搬具 249,999円
12/31 商品として販売
商品 1円 / 車両運搬具 1円(残りの簿価)
現金 800,000円 / 収入 800,000円
売上原価 1円 / 商品 1円
という感じの複式簿記の仕訳を約3~5秒間あればイメージ可能です。複式簿記は経費や収入の相手科目には必ず資産や負債などの相手科目があり、経費の二重計上のような事実をねじ曲げる仕訳の計上できません。
ただ、白色申告の方のように、収入や経費だけを集計する単式簿記に慣れている方は、そのスキームの論理破綻に気づけず、
「中古の商品(自動車又はバイク)を仕入れて、まずは自分用の車やバイク(固定資産)として使用し、その後、商品として販売した場合、仕入金額のほぼ全額を減価償却費として計上できるし、販売時に仕入金額を売上原価としても計上できますよ?税理士が決して教えない節税スキームです。」
というアドバイスを言葉どおりに信じてしまう可能性があるのかなと。
簿記の知識がなかったとしても、
「支払った金額以上に経費できることはない」ということを理解しておきましょう。
-編集後記-
1日製本と個人申告作業。
昼から相続税の打合せと報告会1件。
ストレッチのおかげで坐骨神経痛が和らいできました。
こんにちは!
マラソン・バイク・フルートをこよなく愛する
京都府長岡京市在住の税理士の丹尾 淳史(にお あつし)です。
今回は、税務相談でよく尋ねられた質問、について述べてみました。