地方の倍率地域の土地の評価は簡単?難しい?
よく税理士同士で相続税の話をしているときに、相手の税理士さんの相続税業務の経験値をはかるために、以下の質問をすることがあります。
質問は、
「地方の倍率地域の土地の評価は簡単か?難しいか?」というもの。
その質問に対し、
「倍率地域の土地は評価は固定資産税評価額に倍率を乗じるだけで算定できるので簡単」という回答をした税理士さんは相続税業務の経験値は浅いかなと感じています。
ただ、税理士試験の相続税法でも土地の評価の問題は路線価地域の問題が圧倒的に多く、倍率地域の問題が出題されても固定資産税評価額に倍率を乗じるだけの易しい問題が出題されることも多いため、意外とこの回答を頂くことはあります。
いっぽうで経験値が高い税理士さんは
「倍率地域の土地の評価は、路線価地域の土地の評価よりも難しいケースがある。一概に倍率地域の土地の評価が簡単とは言えないのではないか?」と考察されるものと思います。
そのような考察をされる税理士さんの頭のなかには「市街化調整区域の雑種地」が思い浮かんでいることでしょう。
市街化調整区域の雑種地の評価は現地調査が重要
「市街化調整区域」とは、市街化を抑制する地域で人が住むための住宅や商業施設などを建築することは原則認められていない地域をいい、「雑種地」は、田、畑、宅地、山林、原野など法務省令で特定された他の22種類の用途のいずれにも該当しない土地をいいます。
雑種地の例として資材置き場、(所々に雑草が生えている)駐車場、太陽光発電機の敷地などイメージして頂くといいでしょう。
市街化調整区域の雑種地の評価は、雑種地の現況が山林や農地に近いのであれば山林や農地の評価方法に準じた方法で算定しますし、市街化調整区域は原則住宅の建築は禁止ですが、実際には(農業等に従事する人等の)住宅が建築されていることも多く、その雑種地の周辺に住宅が建築されている場合には、宅地比準方式(その雑種地を一旦宅地として評価し、その評価額から色々な要素(土地の形状、しんしゃく率、造成費等)を減価して算定する方法)を使用することもあります。
また、減価要素として、土地の形状、造成費等を挙げましたが、実際の雑種地の現況によっては減価できる場合と減価できない場合もございます。
また、しんしゃく率には減価割合0%(減価できない)、減価割合30%、減価割合50%のいずれかを選択することになりますが、その判断は実際の雑種地の周辺状況の情報で行います。
市街化調整区域の雑種地の評価は、
・現地調査が重要
・現地調査の情報をもとに課税当局(税務署等)を納得させられるだけの根拠資料を作成する
がポイントとなります。
市街化調整区域の雑種地を評価する機会が増加した
ここ最近、市街化調整区域の雑種地を評価する機会が増加しています。
おそらく理由としては「2024年4月1日から施行される(不動産等の)相続登記の申請義務化(相続又は遺言により不動産を取得した相続人は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないという制度)」が背景にあるかなと思います。
また、市街化調整区域の雑種地については必ずしも「固定資産税評価額に倍率を乗じて算出した評価額」が「宅地比準方式による評価額」より小さくなるというものではなく、「宅地比準方式による評価額」のほうが小さくなることもしばしばあります。(評価額が変わるということであれば、負担すべき相続税額も変わります。)
市街化調整区域の雑種地が相続財産に含まれている場合において、税理士に相続税申告や財産評価を依頼するときは、なるべく相続税に強い、不動産評価に強い税理士を選択をすることをおすすめします。
損をしない内容で申告することも大切ですが、間違いのない(課税当局に対抗できるだけの)内容で申告することも大切なので。
弊所も相続税業務や不動産評価を得意としておりますので、機会がございましたらお問い合わせください。(詳細は相続・贈与・譲渡などの資産税サービス)
■編集後記
午前中は相続税業務。
午後から島村楽器のフルート発表会。
練習のときはそうでもなかったですが、本番でステージにあがると緊張しますね。
震えながら「タイスの瞑想曲」を吹いてきました。
1984年10月30日生まれ。滋賀県大津市生まれ。京都府長岡京市在住。ひとり税理士。相続や会社・フリーランスのための経理やお金を残すサポートが得意。前職は営業マン⇒製造(フォークリフトマン&夜勤塗装)⇒フリーター⇒税理士補助といろんな職種を経験。ビッグ4(現:デロイトトーマツ税理士法人)にも在籍。いい意味で税理士っぽくない税理士。趣味はランニング、バイク、フルート、風景写真。詳細はこちら
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