【会計/税務調査】現金のマイナス残高を決算整理で事業主借勘定で調整するリスク

愛用品を格好よく撮影  NikonD780 AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E
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現金のマイナス残高を決算整理で事業主借勘定で調整するリスクについて整理しました。

現金のマイナス残高で事業主借勘定で調整!?

個人事業主の方の期中の貸借対照表を見ていると現金勘定科目の残高がマイナスになっているケースをよく見かけます。

現金出納帳で事業の経費、預貯金の入出金をきっちり管理していれば現金勘定科目の残高がマイナスになることはありませんが、個人事業主の方の多くは事業の経費と生活費、預貯金の入出金が混在しており、その影響で現金勘定科目の残高の金額がマイナスとなっていることがあります。

私は2社の会計ソフトを使用していますが、12月31日時点の現金残高がマイナスの場合のそれぞれの会計ソフトの推奨する決算整理の方法がまったく違います。

1社は、「12月31日時点の現金残高がマイナスのときは、期中に処理が適切かどうか、生活費が含まれていないか見直しましょう」というオーソドックスな方法を推奨し使用者に一定の手間を取らせますが、もう1社は「12月31日時点の現金残高がマイナスのときは事業主借勘定で調整しましょう」とボタン一つで現金マイナスの残高と解消でき使用者に手間を取らせません。

昨今の便利さを好む使用者にとっては後者の会計ソフトのほうが断然印象が良いと思いますが、簿記の知識をもつ人からすると後者の方法はかなりリスクのある処理であることに気づくはずです。

何が問題なの?

12月31日時点の現金残高がマイナスのときは事業主借勘定で調整するやり方の何が問題かを以下の例でご確認ください。

(例)

➀12月30日時点の現金残高が50,000円。

➁12月31日に事業用の消耗品を30,000円で購入し、帳簿に正しく「消耗品費30,000/現金30,000円」と処理した。

③12月31日に生活用の消耗品を40,000円で購入し、帳簿に誤って「消耗品費(実は生活費)40,000円/現金40,000円」と処理した。

④12月31日時点の現金の残高はマイナス20,000円だったため、現金残高がプラスになるように「現金○○○円/事業主借○○○円」と処理した。

今回のケースでは③の生活用の消耗品40,000円は生活費なので本来は経費(消耗品費)に含めてはいけませんが、前節の後者の会計ソフトの推奨する方法では経費に生活費40,000円が含まれていることになります。(いわゆる経費の過大計上)

本来は前者の会計ソフトが推奨するように、期中の取引を見直し、③の生活費を経費から除外して12月31日時点の現金残高20,000円とするのが正しいやり方です。

本ケースでは間違いは一つだけでしたが、これが数十個、数百個、数千個の仕訳が間違っていたらどうでしょうか?

事業所得は本来のあるべき所得からかけ離れた所得が算定され、結果的に間違った申告をすることになります。

税務調査で一瞬で見抜かれ多額の罰金を支払う可能性も

税務調査で現金の総勘定元帳の確認を受け、期中の現金残高がマイナス、決算整理で「現金○○○/事業主借○○○」の決算整理仕訳があると、現金取引に生活費が含まれれていないかチェックされることになります。

生活費は経費とは認められず否認、現金残高のマイナスが続いてると複式簿記の要件さえ満たしていないと判断される可能性が生じます。

最悪の場合、経費の否認、青色申告の特別控除の否認を受けて納付すべき所得税が増え、連動して延滞税や過少申告加算税、重加算税等の罰金、住民税、国民健康保険料も追加で徴収される可能性もあります。

その際、「私が判断したのではなく会計ソフトの指示に従って処理しただけです。私ではなく会計ソフトが悪いんです」という他責思考の考え方は一切通用しません。

「会計ソフトのやり方に従ったにしろ最終的に判断したのは貴方ですよね」と一蹴されるだけです。

そうならならないためにはやはり基本に立ち戻ることです。

➀事業用の口座、プライベートの口座に分ける

➁口座の入出金を管理して適切に会計処理をする

③現金出納帳には、事業に係る経費のみを記帳する

④現金残高がマイナスになったときはその原因を随時チェックして修正する

上記のルールを守っていれば自然と適切な現金出納帳をつくることができますし、税務調査を恐れることはございません。

また、事実をねじ曲げた事業の所得(営業成績)よりも、事実どおりの事業の所得(営業成績)をみたほうが、今後の事業方針を検討するうえで有益な情報にもなります。

基本に立ち戻って、適切な方法で、自分の愛する事業の歴史を、帳簿に綴(つづ)っていきましょう!


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相続・贈与・譲渡などの資産税サービス

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■編集後記

軽いジョギングで郵便局とお客さまのお店をまわりました。

その後、ゆっくり河川敷をジョギングしましたが大量の蚊柱に遭遇(笑)

税理士 丹尾淳史
税理士 丹尾淳史

1984年10月30日生まれ。滋賀県大津市生まれ。京都府長岡京市在住。ひとり税理士。相続や会社・フリーランスのための経理やお金を残すサポートが得意。前職は営業マン⇒製造(フォークリフトマン&夜勤塗装)⇒フリーター⇒税理士補助といろんな職種を経験。ビッグ4(現:デロイトトーマツ税理士法人)にも在籍。いい意味で税理士っぽくない税理士。趣味はランニング、バイク、フルート、風景写真。詳細はこちら

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