勉強時間3,000時間は本当か?
よく税理士試験を合格する必要な勉強時間は2,000時間~3,000時間と目にすることがあります。
仮に、3,000時間だとすると、理論上は毎日8~9時間程勉強すれば1年間で3,000時間の勉強時間を確保することができます。受験専念できる人からすれば、1年で3,000時間の勉強時間を確保するのは容易かなと思います。
ただし、多くの試験合格者に「3,000時間の勉強時間があれば税理士試験を突破できるか?」という質問をすると「No!」という答えが多く返ってくると思います。
私の受験生時代の経験値から勉強時間を算出してみました。
⑴まずは、各科目の講義時間を算出。(授業回数をコマで表現)
①簿記論 3時間/コマ×8コマ/月×11か月(9月~7月)=264時間
➁財務諸表論 3時間/コマ×8コマ/月×11か月(9月~7月)=264時間
➂法人税法 3時間/コマ×12コマ/月×4か月(9月~12月)+3時間/コマ×8コマ/月×7か月(1月~7月)=312時間
➃相続税法 3時間/コマ×8コマ/月×11か月(9月~7月)=264時間
⑤消費税法 3時間/コマ×4コマ/月×11か月(9月~7月)=132時間
⑵次に各科目の講義時間から復習時間を加算します。これも私の経験値によるもので個人差はあると思いますが、それぞれの各科目の復習時間について、
簿記論は講義時間の1.5倍(計算のみ)、
財務諸表論は講義時間の2倍(計算のほか理論暗記が必要のため)、
税法(法人税法、相続税法、消費税法)は講義時間の3倍(1語1句レベルの条文の暗記が必要のため)、
は最低でも復習時間が必要かなと思います。
そうすると、各科目の「講義」と「復習」を合わせた勉強時間は、
①簿記論 264時間(講義)+264時間×1.5倍(復習)=660時間
➁財務諸表論 264時間(講義)+264時間×2倍(復習)=792時間
➂法人税法 312時間(講義)+312時間×3倍(復習)=1,248時間
➃相続税法 264時間(講義)+264時間×3倍(復習)=1,056時間
⑤消費税法 132時間(講義)+132時間×3倍(復習)=528時間
➀~⑤の計4,284時間
1科目も落とさずに合格した人でも4,000時間程の勉強時間は必要となります。
ちなみに、1科目も落とさずに合格した人の受験期間は2年~5年程。(複数科目同時受験か1年1科目ずつ受験かで、受験期間期間は変わります。)
ただし、1科目も落とさずに税理士試験に合格する人は、合格者のなかでも超優秀な層で本当にごく一部です。(私も含め、多くの合格者は同じ科目を何回も受験して合格しています。)
また、いっぽうで合格者の平均受験期間は8年~10年といわれています。
私も受験期間は8年でいわゆる平均値となります。
私の税理士試験に要した勉強時間は以下のとおり。
受験回数2回目以降は、1回目の勉強時間の0.6とします。(1回目よりもインプットに必要な時間が少ないため。)
①簿記論 3回目で合格 660時間×1(1回目)+660時間×0.6×2(2~3回目)=1,452時間
➁財務諸表論 2回目で合格 792時間×1(1回目)+792時間×0.6×1(2回目)=1,267時間
➂法人税法 2回目で合格 1,248時間×1(1回目)+1,248時間×0.6×1(2回目)=1,996時間
➃相続税法 4回目で合格 1,056時間×1(1回目)+1,056時間×0.6×3(2~4回目)=2,955時間
⑤消費税法 2回目で合格 528時間×1(1回目)+528時間×0.6×1(2回目)=844時間
➀~⑤の計8,514時間
個人的に、
合格年数×1,000時間=合格にかかった勉強時間
が感覚的にちょうど良い指標かなと思います。(働きながらで税理士試験に挑戦すること前提ですが…)
合格平均年数は8年~10年ということは、合格平均勉強時間は8,000時間~10,000時間ぐらいかなと推測されます。
合格率15%~20%は本当か?
税理士試験の合格率は20%前後と見かけることがあります。
他の士業の資格試験の合格率は10%未満のため、合格率だけをみると士業のなかでも税理士試験の合格率は突出して高いと思います。
ただ、税理士試験の合格率は注意が必要です。
実際の税理士試験の各科目の合格率は10%~20%と言われています。
最近は会計科目(簿記論・財務諸表論)の合格率が上昇傾向にあるということなので、
会計科目の合格率が15%~20%
税法科目の合格率が10%~15%
税理士試験は会計科目を2つ(簿記論・財務諸表論)、税法科目を3つ(法人税法、所得税法のいずれかは必須、その他の税法科目は選択)の計5つの科目に合格してはじめて税理士試験に合格となります。
そして税法受験生の大部分は既に会計科目は合格済です。
会計科目が一次試験、税法科目が二次試験といったイメージ。
私が考える税理士試験の合格率は
会計科目の合格率15%~20%×税法科目の合格率10%~15%=1.5%~3%
というのが妥当かなと思います。
私が受験者時代のときは官報合格(試験5科目合格)の合格率は2.2%と言われていました。
例年、官報合格者数をその年の全受験者数で割った合格率が2.2%で毎年2.2%で推移しているというものです。
合格率2.2%というのは、個人的にはいい線いっているのかなと思います。
また、大学院2年間に通うことで税法科目2つを免除するルートもありますが、働きながら大学院を通う場合、その2年間は覚悟をもって通うことになります。
私の元同僚の何人かは働きながら大学院に通っていましたが、休日・祝日は大学院の勉強に全振り、平日も仕事終わりにフラフラになりながら大学院に通っていました。(論文執筆期間は睡眠時間をかなり削る必要があります。)
決した大学院ルートが楽というわけではありません。
そのことは肝に銘じておきましょう。
科目合格制度は本当に楽か?
税理士試験は科目合格制で、1科目でも合格すれば、その科目は合格科目として永久に保持できます。
そして、1科目ずつ受験して合格を積み重ねていけば、いつかは税理士の資格を取得することができます。
それゆえに、税理士試験は諦めなければ必ず合格できる試験と言われたりしますし、1科目ずつ受験できることから働きながらでも挑戦しやすい試験とも言われます。
いっぽうで、科目合格制度が、税理士試験の受験期間の長期化の要因とも言われています。
1科目ずつ挑戦しやすいということは、言い換えれば、その1科目の内容を誰もが深い内容を勉強することになります。
税理士試験は1科目ごとにかなり深い内容を勉強し習得しなければ、合格を手にすることはできません。(税法の場合、具体的には条文の内容を理解しながら1語1句暗記し、いつでもその条文を使いこなす能力を磨く必要があります)
そのため、科目ごとにその科目の猛者(ベテラン受験生)が多くいて、その猛者と闘いながら5回(大学院の場合には3回)試験をクリアする必要があります。(税理士試験は絶対評価ではなく相対評価のため合格圏内の上位に入らないと来年も受験となります。)
まとめ
5科目合格の場合、
▢合格に必要な勉強時間
✓世間的には、平均2,000時間~3,000時間
✓実際には、平均8,000時間以上(平均合格年数8年の場合)
□合格率
✓世間的には、合格率20%前後
✓実際には、合格率2.2%(1.5%~3%)
□科目合格制度
✓世間的には、科目合格制度だから1つ科目に集中できるので受験しやすい
✓実際には、科目合格制度だから1つの科目に集中できるので深い内容まで勉強する必要があり、猛者(ベテラン)と闘いながら5回クリアする必要があるので長期化しやすい。(絶対評価ではなく相対評価のため合格圏内の上位に入らないと来年も受験。)
以上となります。
それでも税理士になりたい方は是非最後まで諦めず絶対に税理士になってください!
税理士資格の自由度と可能性の高さを是非ご自身で体験ください。
応援しています。
■本日の仕事
午前中は事業承継業務、午後から商工会で税務相談、夕方は認定支援機関業務
□練習日誌(フルマラソン、サブ4チャレンジ)
筋トレ
1984年10月30日生まれ。滋賀県大津市生まれ。京都府長岡京市在住。ひとり税理士。相続や会社・フリーランスのための経理やお金を残すサポートが得意。前職は営業マン⇒製造(フォークリフトマン&夜勤塗装)⇒フリーター⇒税理士補助といろんな職種を経験。ビッグ4(現:デロイトトーマツ税理士法人)にも在籍。いい意味で税理士っぽくない税理士。趣味はランニング、バイク、フルート、風景写真。詳細はこちら
こんにちは!
マラソン・バイク・フルートをこよなく愛する
京都府長岡京市在住の税理士の丹尾 淳史(にお あつし)です。
今回は税理士試験について述べたいと思います。
税理士試験のネットでよく見かける合格率、科目合格制、勉強時間の情報を、自分の経験値をもとに精査してみました。
ご参考ください。