最近では給与所得者の副業が事業所得に該当するか否かで「帳簿」の有無が大切なポイントになることが公表されました。
その大切なポイントとなる「帳簿」。
「帳簿」という言葉は知っている要件などの具体的な内容は知らないという方は意外と多いのではないでしょうか。
今回はその「帳簿」について➀要件、②間違いやすいこと、③習慣化のためのマインドについてまとめてみました。。
「帳簿」の要件を理解しよう
「帳簿」とは、取引やお金の流れなどを記録した帳面のことをいいます。
家計簿をイメージしてもらえるとわかりやすいと思います。(家計簿も立派な「帳簿」)
税務申告をする際も事業の「帳簿」をつける必要がありますが、その帳簿については要件というのがあります。
その要件とは
➀取引日
②取引内容
③取引相手
④取引金額
の4つでこの4項目をはっきりと分かるように帳面に記載する必要があります。
例えば、2022年11月1日に文具1,000円をA本屋で購入した場合には
「消耗品費」の帳面(欄)に
2022年11月1日 文具の購入 A本屋 1,000円
と仕訳を記載することになります。
勘定科目ごとに少額な取引については日々の合計額を一括して記載することはできますが、原則は1取引につき1つの仕訳を記載することになります。
このルールは青色申告、白色申告を問わず同じです。
このルールに従わないと税務調査等で帳簿を正しくつけていないことを理由に経費が否認され余計な税金と罰金を支払う可能性も生じます。
帳簿をつけるにあたりこの4要件はしっかり守るようにしましょう。
収支表は「帳簿」にあらず。
Excelで集計した収支表を「帳簿」と勘違いされているケースを多くみかけます。
例えば先頭ページに月別・年間別の収支の総括表をつくり、別のページに各勘定科目の集計シートを作成し、領収書を見ながらと「取引日」と「金額」を入力、Excel関数で自動的に集計された金額が各勘定科目のタブから先頭の月別・年間別の収支の総括表に転記するといった具合です。
このExcelシートでは、「取引日」と「取引金額」という要件は満たされますが、「取引先」「取引内容」の要件は満たさないため「帳簿」とは言えません。
面倒ですが1取引ごとに➀取引日、②取引内容、③取引相手、④取引金額を記載して帳簿を作成するようにしましょう。
面倒な帳簿を習慣化するためには
前節、前々節で述べたように「帳簿」の作成は面倒で地道な作業です。
毎日、帳簿をつける事業者がいるいっぽうで確定申告時期にまとめて1年分の帳簿をつける事業者がおられます。
確定申告時期にまとめて1年分の帳簿をつける事業者の多くは、税務申告が目的のために帳簿を作成している傾向にあります。
ただ、それだともったいない。
事業(商売)は水物です。
自分の育成中の事業(事業の業績)をリアルタイムで観察(把握)するために帳簿をつけるという考えはいかがでしょうか?
その観察した結果をもとに事業の方針を決定していく、そして事業の方針が当たればその決定した方針に数値的な根拠を持つことができる、そうれなれば事業活動が今よりもっと楽しくなります。(少なくとも私は科学者や軍師になった気分で楽しいです。)
毎日帳簿をつける事業者には、事業を観察し育てていくのが好きという方が多いです。
自分自身の簿記の知識を身につけて帳簿の理解を深めることは大切ですが、入力業務等の手間のかかる作業はIT(会計ソフト等)に委ねることもできます。
「帳簿」は税務申告のためだけにあらず、むしろ自分の事業の状態を観察し育てるために作成・使用することこそが帳簿の真の目的だと私は考えます。
■編集後記
早朝ランニング。
午前中は法人申告と相続税の打合せ。
午後は税理士の集まり。
仕事を終えてから一眼レフの保護フィルム貼りに挑戦。
1984年10月30日生まれ。滋賀県大津市生まれ。京都府長岡京市在住。ひとり税理士。相続や会社・フリーランスのための経理やお金を残すサポートが得意。前職は営業マン⇒製造(フォークリフトマン&夜勤塗装)⇒フリーター⇒税理士補助といろんな職種を経験。ビッグ4(現:デロイトトーマツ税理士法人)にも在籍。いい意味で税理士っぽくない税理士。趣味はランニング、バイク、フルート、風景写真。詳細はこちら
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